2011年12月28日水曜日

代表の交替とNPOの意味について

長らくNPO化についてだらだらと書いてきましたが、時々こんな風に言われることがあります。

「帳簿処理や規約に基づいた運用って、別にNPOじゃなくても良いんじゃないの?」

はい、おっしゃるとおりですW 世の中には任意団体のまま、きっちり活動されている団体は星の数ほどあります。

しかしIGDA日本はその道を選びませんでした。なぜでしょう? とりあえず個人的な動機付けとして一番大きいのは、「ちゃんと代表が交替できる組織にしよう」という点です。ぶっちゃけ代表に就任するにあたって、僕は「辞める気」まんまんで引き受けました。

実はIGDA日本って、代表の任期や交替に関する規約が、まだないんです。というより規約そのものが整備中。というのも、前代表の新さんが最初にIGDA日本を立ち上げたとき、誰もこんなに長く続くと思ってなかったんですよ。僕が言うのもなんですが、たぶん当の新さんも同じ気持ちだったと思います。とりあえず迷う前に飛べと。かなり勢いに任せた部分があったのではないでしょうか。横から見ていた限りでは、そんな印象でした。

それが幸か不幸か、皆様の温かいご支援とお力添えに恵まれて、ここまで活動を続けられることができました。活動規模もどんどん大きくなって、今では平均すると年に1回以上、なんらかのセミヤーや活動が行えるまでになっています。正直、発足当初はゲーム開発者コミュニティ自体が日本では成立不可能と言われていたほどなので、浮き世の感があります。まさに、これは新さんの慧眼であり、並々ならぬ行動力の賜物だったと言えるでしょう。

ただ、それだけに代表個人に関する負担が年々大きくなっていったのも事実でした。それと共に、誰が新さんの後任になれるのか、という新しい問題が生まれてきたんですね。はっきり言って、誰がやっても無理だし、なんとなくみんなで牽制し合っている雰囲気もありました。そんな中でここ1年くらい、僕の方に話がふってくるんじゃないかなあ、という印象を受けていまして、やっぱりそうなった、というのが正直なところです。

いまちょっとメールを確認したら、5/23に新さんから代表交代に関するメールが僕のところに来てますね。正直ちょっと迷ったんですけど、結果的にその日のうちに受託しますとメールを返しています。その後でスカイプチャットで行っている運営ミーティングに話が上げられて、問題ないでしょうということになり、TGSが終わったあたりでリリースを出すことになって、現在に至るという流れです。客観的にみて、すごく適当な感じがしますけど、でもそれしかなかったんですね。だってルールがないんだからw

というわけで僕も引き受けるに当たって、自分の中の条件として「気持ちよく次に引き継げるための仕組みを作ろう」と固く心に誓いましたw いや、だって大変なんですよ中途半端に大きくなった任意団体、それもIGDA日本みたいにボランティアベースの代表って。それで儲かるわけじゃないのに、責任だけはふってきますからね。一方でトップが変わらない組織は絶対駄目になっていくのも、また事実です。

これを避けるためには、トップの役割をみんなで分担して、もっと代表交替の敷居を下げる。ひらたくいうと、新さんじゃなくてもIGDA日本の代表が務まるようにする。そのためにはルール作りもさることながら、ルールとルールに基づいた運用が、外部からチェックされ続ける必要がある。そのためにはNPOみたいに法律に基づいた組織になるのが早い、というロジックです。

余談ですけど、僕とかあなたとか、人には人格がありますよね。企業などの法人はこれに対して法人格があります。つまり会社や組織を架空の「人格」に見立てる。これによって構成員が変わっても、架空の「法人」が存続し続ける。こんな風に組織と構成員を切り離すことによって、責任を分担できるんです。

これまでは代表=組織だったので、代表一人が組織の責任を負うシステムだったのが、みんなで分担して責任を負うシステムに変えていきましょうという訳です。だって代表一人が責任を負うなんて、怖くてやってられませんよ。もちろん「架空の存在に人格を与える」には、それ相応のめんどくさい手続きが必要なんですが(じゃないと乱立しちゃうので)、そこは粛々と頑張っていきましょうという形です。

というわけで、まるっとまとめると、NPOになって得をするのは誰だ? それは代表=僕だ! というお話でしたw ホントに、「辞める気まんまん」で引き受けましたので、ぜひとも皆さんのご協力をよろしくお願いします。



2011年12月26日月曜日

運営ミーティングを行っています

IGDA日本事務局では11月から毎週木曜日の夜にスカイプミーティング、毎月最終土曜日の午後に公民館の会議室などを借りて、リアルミーティングを開催しています。テーマはIGDA日本の運営に関するさまざまなことで、中でも一番大きいテーマがNPOに関する準備(定款や細則などの規定作り)です。議事録はGoogle DocmentとDropboxで共有され、事務局MLに参加しているメンバーなら、誰でも見られるようになっています。

このように定例ミーティングを開始してから、これまでわからなかったこと、見えなかったことが、よりクリアになってきました。僕自身もこれまで主に、SIGの共同世話人という立場でIGDA日本にかかわってきたため、活動も限定的でしたが、新しく代表として事務局の運営を推進していくにあたり、改めてわかったことがたくさんあります。

中でも代表的なものは、お金の流れです。これまでIGDA日本では主にSIG単位でセミナーを行い、事務局の活動は限定的でした。これにはゲーム開発者の多くが首都圏に集結しており、IGDA日本の活動が活発になるにつれて、自然と専門的な分野に分かれていったという経緯があります(海外では逆で都市ごとにゲーム開発クラスターがあり、そこのコミュニティとしてIGDAの支部が発足する一方で、専門分野の関心事を共有する人々がSIGとしてまとまり、支部を越えたコミュニティを形成する流れが見られます)。セミナーなどの収支も単独、またはSIG単位で黒字になれば良く、会計や運用も原則としてSIGの世話人にゆだねられてきました。

しかし、NPO化するためには、IGDA日本の収支を一元化し、帳簿に記載して決算を出し、公開しなければなりません。そのため現在、SIGで管理しているお金を集約すると共に、3月末の決算に向けて整理を行っています。その一環として2011年度に開催したSIGセミナーの決算表を、12月のリアルミーティングで精査したのですが、黒字のものもあり、赤字のものもあり、改めて活動内容を違った角度から振り返ることができました。

なお、NPO化の準備に伴い、 今後はSIG単独の予算という概念はなくなり、経費関係はSIGの世話人が一時立て替えて、後に事務局から振込精算する形になります。こうすることで、単独では赤字が予測されるセミナーでも、開催意義が高いものであれば、事務局決済で開催可能になります。交通費や謝礼など、これまで曖昧だった経費の支出についても、現在規約を整備中です。手間が増えるのは確かなのですが、こうしたルール作りを進めることで、より質の高い活動ができると考えています。

こんなふうに、活動の環境を整備することで、より大きなチャレンジを継続的に行っていこうというのが、NPO化の大きな理由です。まずお金の流れを明確にして、次にセミナー開催などのフローを策定し、活動計画を立てて年間予算を決め、という風にミーティングを進めています。いわば、より高くジャンプをするために一度、身をかがめて力を蓄えている状況なのですが、では具体的に来期は何をするのか。 NPO化の申請は大きな目標の一つですが、それ以外のアクションについては、改めてご報告できるかと思います。

2011年12月17日土曜日

SIG-INDIEが開催されました

SIG-INDIE MMD for Unityが12月5日に開催されました。当日は50名弱の方々にご参加いただき、大変ありがとうございました。準備と運営を取り仕切った神奈川工科大の竹渕君、たいへんお疲れ様でした。また会場を無償でご提供いただいた、CRIミドルウェア様には改めて御礼を申し上げます。僕もUstream配信で参加しました。回線トラブルで断線が続き、たいへんご迷惑をおかけしました。ニコニコ動画さんが同時配信されていたので助かりました(僕はWi-MAX、ニコ動さんはイーモバイルで配信されており、こちらは回線トラブルが軽微だったようです)。

さて、前回までいろいろとNPO化について私論を書いてきましたが、そもそもどうしてみんな、こうした活動を行っているのでしょうか? IGDA日本だけでなく、全世界のIGDAの活動は基本的に会員のボランティアワークでまかなわれています(本部でも常勤スタッフは3名程度しかいません)。おそらく、答えは人によって異なると思います。そこでとりあえず僕の場合を説明しましょう。答えはシンプルで「楽しいから」です。多かれ少なかれ、他の人々も同じような感覚を抱いているんじゃないかな。だって義務感や使命感では、こんなに長く続かないですよ。活動をしていて楽しいから、ずっと続いているんです。

たとえば僕はそれまで、SIG-GLOCALIZATIONの共同世話人として、主にSIGの活動を中心にIGDAに関わってきました。そのため他のSIGのセミナーには、あまり顔を出していなかったのですが、昨年秋からUstream配信チームの一員として、ほぼすべてのセミナーに顔を出すようになりました。そこでいろいろな人とコミュニケーションを取ったり、それまで知らなかった知識に触れたり、そしてなにより会社や仕事の枠を越えた、IGDAという、より大きな組織の一員として活動することで、さらに大きな楽しさを感じるようになりました。しかも活動を通して「信頼感」という、目に見えない価値を得ているという実感があります。

もちろん、IGDAの活動にかまけて、本業がおろそかになるようでは、本末転倒ですよね。もちろん僕も主夫時々ゲームジャーナリストの合間の時間で活動しているので、ご心配なく。やっぱり一日は24時間しかなくて、一人で行える作業量には限りがありますから。ただ、よく最近言っているんですが、いつもの仕事を9割の時間で片付けて、残りの1割をコミュニティのために費やさなければ、いろんな意味で、そのうちご飯が食べられなくなっちゃうんじゃないかなあ・・・。

まあ、僕がフリーランスだからそう感じるのかもしれませんが、これから日本経済はどんどんアメリカライクになっていき、会社という疑似共同体は解体されていく。そこで会社間をつなぐ、IGDA日本のようなコミュニティの存在は、さらに大きくなっていく印象を受けます。皆さんはどのように感じられるでしょうか? では!


2011年12月7日水曜日

NPO化に関する個人的なスタンス

小野です。前回はIGDA日本として、全体的なNPO化に関する考えやスタンスを説明しましたので、今回は個人的な考えについて、簡単に説明させていただきます。なお、この内容は全て僕個人の考えであることはお断りしておきます。また、IGDA日本に関わっていただいているすべての人に、それぞれの考えがあることと思います。いろいろコメントなどいただければ幸いです。

さて、僕はゲームというものを、大きな意味で「インターフェース」だと捉えています。インターフェースといっても、入力デバイスやGUIなどの話ではなく、ホントに大きな意味での「接点」というイメージです。

これまでゲームの開発技術は、変な言い方になりますが「娯楽の一部」と結びつくことで、テレビゲームとして成立してきました。しかし今ではそれが結びつく領域がどんどん拡大していて、シリアスゲームやゲーミフィケーションといった、新しい領域を生み出してきました。ARGなどもその一つですし、今後は映画産業などと、さらに密接に結びついていくことでしょう。

つまり、ゲームの開発技術やノウハウが、一方では古典的な「ゲーム」というエンターテインメントして存在し、もう一方では娯楽以外の様々な産業や領域と結びついて、さらに拡散していくというイメージです。そしてそのうち、シリアスゲームやゲーミフィケーション、ひいてはゲームという言葉すらも意味を失っていき、日常の生活全てが「ゲーム」と呼ばれる時代が遠からずやってくることと思います。

こんな風にゲームが何かと融合し、文字通り私たちと社会を結ぶ「インターフェース」になる。2000年くらいから、そんな風な漠然としたビジョンを抱くようになりました。ゲームUIのノウハウを実領域に応用する「ゲームニクス」などのビジョンに共感するのも、こうした理由からです。

でもって、こんな風にゲームがゲーム以外の領域と切り結び、融合して、新しい化学変化を起こすようになるためには、ゲーム開発やゲーム開発者のコミュニティもまた、他の産業や学術(=学会など)のコミュニティと、きっちり膝づめで話が出来るように、公的性や社会性を持つ必要がある。そんな風に、ここ数年で考えるようになりました。

もちろん、産業としてのまとまりであったり、受け皿としては、CESA(一般社団法人コンピュータエンターテイメント協会)がありますし、CEDECやTGSがその一翼を担っています。しかし、それよりももっと現場寄りだったり、開発者個人を対象としたコミュニティであったり、より小規模で小回りのきく受け皿があってもいいなあと思うわけです。そして、まさにこれがIGDAがこれまで担ってきた役割で、これからも変わらない部分だと思っています。

まとめると、ゲームが娯楽の一分野という狭い殻の中に収まりきらなくなりつつある今、IGDAもまた、より大きな世界と肩を並べていくうえで、より社会的な存在になる必要がある・・・。そんなイメージです。うまく意図がご理解いただけたなら幸いです。

2011年12月3日土曜日

ブログを始めました

IGDA日本代表の小野憲史です。思い立って新しいブログを始めることにしました。
すでに代表信任の挨拶でも述べたとおり、現在IGDA日本はNPO法人化に向けて準備を進めています。そこで本ブログでは、その進捗状況などについて紹介しつつ、より多くの方々にIGDA日本の取り組みについて知っていただき、活動のご協力を賜れればと思っています。

現在IGDA日本では毎週1回の定例ミーティングを行っています。ミーティングはスカイプチャットとオフラインミーティングの2種類があり、スカイプチャットは毎週木曜日の午後10時から1時間、オフラインミーティングは毎月最終土曜日の夕方4時から2時間程度です。

もっとも、なぜNPO法人化が必要なのか、ほとんどの方にとって、あまりピンと来ないのが正直なところだと思います。そこで、はじめに運営メンバーがどのような問題意識を抱いているのかについて、簡単にご説明しましょう。

IGDAは米カルフォルニア州にて登録が行われている国際NPOですが、IGDA日本は任意団体として活動をしています。任意団体というのは、ひらたくいえば趣味のサークル活動などと同じ、私的な集まりという意味です。余談ですが、世界各地のほとんどの支部は、IGDA日本と同じ任意団体です。

もっとも活動が小規模のうちは、任意団体の方が小回りがきいて良いんですよね。これが年数が経って、専門部会(SIG)が発足したり、秋葉原ロケテショウや福島ゲームジャムなどのイベントを行ったりと、だんだん活動が大きくなるにつれて、さまざまな問題が顕在化してきました。

ここでまるっと整理してしまうと、団体の活動がある程度以上になると、どうしても世の中の仕組み、ひらたくいえば「法律」と向き合う必要が出てくるんです。たとえばイベントで事故が発生した、SIGのセミナーで著作権侵害が発生した。こんな時に任意団体のままでは、責任の所在が不明瞭になってしまいます。

そこで「法人格」という、もう一つの人格を作ることで、こうした問題にも、しっかり対応していきましょう、ということなんですね。これは裏を返せば、IGDA日本が、これからますます活動をアクティブにしていくという宣言でもあります(でなければ法人格を持つメリットはありませんからね)。

もっとも法人格を取得するのは、それなりにやっかいです。定款や税務関係の書類を作ったり、法人登記をしたり、いろいろ面倒なことが待ち構えています。税理士や司法書士・行政書士の方々に相談に上がったりもしています。もっとサクッとNPOにできるかも、なんて甘いことも考えていたりしたのですが、そうは問屋が卸しませんでしたね。

とはいえ、言っちゃったからには、粛々と進めていくしかない。というわけで現在は組織固めを進める毎日です。より高くジャンプするためには、一回足を縮めて力を蓄える必要があるという感じでしょうか。皆さんの中で、こうした活動に協力したいという方がいたら、ぜひご連絡いただければと思います。ではでは!