2012年2月20日月曜日

ハピネス社会


2012年2月18日に秋葉原で開催されたenchant.jsと9leapsのユーザーイベント「Leapfest」で行った「ハピネス社会」という15分間のスピーチとスライドです。igda日本の基本的なビジョンについても触れているので共有します。

皆さんこんにちは。igda日本の小野憲史です。

今日は9leapの投稿ユーザーが多いと聞いて、勝手に学生を対象者に講演内容を考えてきました。社会人の方は学生に戻ったつもりで聞いてください。

さて、9leapへのゲームプログラム投稿は面白かったですか? 僕らのチームもグローバルゲームジャムで「ワナゲー」というゲームを投稿しました。非常に面白かったです。ゲームを作るのも面白かったけど、9leapに投稿したのも面白かった。

でも、なぜ無償の行為が面白く感じたのでしょうか? 社会人になると、しばしば「なぜ仕事がつまらないのか」「どうしたら楽しくなるのか」「働く意味とは何なのか」といった思いにとらわれることがあります。9leapに参加して幸福感(ハピネス)が得られた理由はなんでしょうか?

つらつら考えると、大きく3つの理由が思い当たります。▽自由意思である▽無償の行為である▽仲間やライバルがいるーー。つまり、これが「社会的な遊び」だからですね。

実はこれは偶然ではなくて、これらを意図してenchant.jsと9leapは設計されているように感じます。▽習得しやすい言語▽ゲームという題材▽ランキングやメダルなど、ゲーミフィケーション的な仕組みーーなどです。特に三番目の存在は大きくて、単純に器だけを作って、さあどうぞというわけではないんですね。

つまり9leapの参加者はゲームを作ってハピネスを生み出していますが、9leapを生み出したUEIは投稿ゲームが集まるサイトを運営することで、ハピネスを生み出していると言えます。

皆さんは将来、さまざまな職業に就くでしょう。ゲーム開発者なら、ゲームを作ってハピネスを生み出してください。ウェブ制作者なら、ウェブサービスを作ってハピネスを生み出してください。そして、それ以外の業界に進む方でも、ビジネスや社会変革などでハピネスを生み出すことができます。

実際、僕は「第4の波」はハピネスだと勝手に思っています。人類はこれまで、さまざまな価値を作り出してきました。農業社会、工業社会、情報化社会。次の波は何でしょうか? 僕はハピネスこそが新しい産業を生み出すと思っています。というより、もうそれくらいしか先進国では売るモノがないんです。

ハピネスをビジネスにした例にスターバックスがあります。スターバックス以前、喫茶店はコーヒーを飲んでタバコを吸う場所でした。しかしスターバックスは全店禁煙です。なぜ人はタバコが吸えない喫茶店で高いコーヒーを飲むのでしょうか。それは創業者がイタリアのバール文化をアメリカに持ち込みたかったからだそうです。自宅と会社の中間にある、家族的な一体感が得られる、ほっとする空間をお客様に提供したかったのです。タバコくさい居間ではくつろげないですからね。

ここまでいかずとも、ちょっとしたアイディアや仕掛けで社会は大きく変わります。たとえば地下鉄のサインシステムがあります。昔は地下鉄路の路線図は色マークだけでしたが、都心のターミナル駅では似たような色のマークが多く、都内に務めている方でも、けっこう迷いました。それで数年前から記号もつくようになりました。これで駅の滞留時間が減少したそうです。記号をつけるだけでハピネスを生み出した好例です。

さて、我々IGDA日本です。我々はゲーム開発者「個人」を対象とした団体で、セミナーなどを通してコミュニティを形成し、業界に貢献することを目的としています。本部はアメリカで、1995年にスタートしました。日本支部は2002年に今の形態でスタートし、来年度にむけてNPO法人化を目指しています。

活動は全てボランティアです。義務感ではなくて、楽しさがベースとなっています。そこには企業の枠を越えて、より大きな存在の一因として活動することで、他人に喜ばれている実感があります。つまりハピネスを生み出すことで自分たちが幸福感を感じているのです。

年間20回程度のセミナーやイベントを開催していますが、学生向けのものでは▽福島ゲームジャム▽CEDECスカラーシップ▽学生ゲーム勉強会ーーなどがああります。福島ゲームジャムは東京のプロのゲームクリエイターと、南相馬市の人が30時間程度でゲームを作るというものです。昨年の夏にユビキタスエンタテインメントと共同で実施しました。今年も夏に行う予定です。

余談ですがゲームジャムはコンテストではありません。初対面の人同士が共同でプロジェクトを完成させることを通して達成感や連帯感を感じてもらい、人間力を養うことを目的としています。つまり、これもハピネスの生成を目的に設計されているのです。

igda日本に興味を持ってもらったら、ぜひイベントやセミナーに参加してみてください。そして機会があれば、そこから運営側に回ってもらえればと思います。この時によく言っているのですが、100%の仕事を90%の時間で片付けて、残り10%でハピネスを生み出すようにしていくと、良いと思います。コミュニティ活動も、その一つです。

まとめます。次の産業はハピネスが主役になっていくと思います。いろいろな分野でハピネスを生み出せる人になりましょう。そのためにはigda日本のようなコミュニティ活動に参加するのも一案です。

というわけで、みんなでハピネス社会を創造していきましょう。ありがとうございました。